ARCSモデルのC(自信)

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学習意欲を引き出すためのモデル、ARCS理論について引き続き説明していきます。今回はC(自信)についてです。

自分は出来る、やれると実感したいというのは人間の基本的な動機であるといわれています。ですので研修に対して難しすぎて出来ないと思われるよりは、「これはやれば出来るぞ」と思ってもらうほうが研修に参加してもらいやすくなります。

一方で自信を持ちすぎてしまうと、既に知っているし、簡単に出来ると思われてしまい、研修に対する興味を失ってしまいます。

つまり、研修に対してちょっと難しいけど、やれば出来そうだなと思ってもらえれば、持続的に意欲を刺激することができるわけです。その方法は、学習要件、成功の機会、個人的なコントロールの3つに分類することができます。

 

まず学習要件についてですが、研修を受ける際に何を学んでほしいか、どういう成果を上げてほしいかが明確でないということは、不安を感じさせる大きな原因となります。例えば、とりあえず研修を受けるように言われて受講する、あるいは初心者講習等のような具体的な内容がわからない研修を受講するといった場合、モチベーションが上がりにくいと思います。

具体的な目標を伝えるというのは、自信を持ってもらううえで最も簡単な方法の一つです。その際に研修の前提条件や基準があるならば、それを伝えるとより効果的です。例えば、ビジネス英語研修を実施するとして、「高校レベルの英語の読み書きができる方に、外国人と英会話で価格交渉が出来るようになってもらう」というようにすると、研修に対する不安が減ります。

 

次に成功の機会ですが、研修で学んだことで実際に成功してもらうということは、いうまでもなく自信につながります。ですので、研修中に課題を出したり、練習の時間やゲームを取り入れて、達成してもらうことで自信を深めてもらうことは大切です。

その際に注意しなければならないのは、新しい知識やスキルを学んでいる最中の人と、基本を習得し習熟レベルを上げていく段階の人とでは、求めることが違うということです。

学び始めた、学んでいる最中の人は、基本的であったり簡単な問題が良いです。ヒントであったり、答え合わせのようなフィードバックを頻繁にすると効果的です。

一方基礎を習得してしまうと、応用問題や実際を想定した課題に取り組んでもらうことが効果的です。

この時意識しなければならないのは、受講者の状況を見ながら機会を提供していくことです。難しすぎれば不安感を煽り自信を失いますし、簡単すぎれば自信過剰となり研修に興味を失う可能性が高くなります。受講者のレベルの変化にあわせて調整することが大切です。

 

最後に個人的なコントロールです。自信は課題に成功することで得られますが、自分のペースでできるかどうかも影響します。何度も試行錯誤を繰り返せたり、自分の得意なところはさらっと、難しいところは時間をかけて何度も繰り返すなどの自分のペースや、自分なりのやり方でやってみることができるとやる気は高まります。

ですので学習意欲の点のみでいえば、講師のコントロールは研修内容と成果の基準を守るという2点のみに絞り、それ以外の部分は学習者に委ねるのが良いとされています。

受講者の個人的なコントロールで自信を持たせるためには、試行錯誤している際に誤りの原因を見つけ、修正点がわかるようなフィードバックをするのが良いです。そうすることで、間違っていてもそこから学ぶという気持ちを育てることができます。

ここで注意しなければならないのは、最終的・総括的な評価を出す前に適時フィードバックをする必要があるということです。最終評価だけしか下さない場合は、講師や他の受講者に良くみられたいという気持ちが強くなり、誤りを避け、隠したがるようになってしまい、自信の低下や学習意欲の減退を招きます。

また、もう一つ気を付けなければならないのは、「たまたま成功(失敗)した」「運が良かった(悪かった)」といったような言い方は避けなければいけません。

「能力がついたからできた」「着想が素晴らしい」等、努力や能力といった自己でコントロールできることが原因と結びつくと学習意欲が増えていきますが、偶然や運などのコントロールできない要因を評価すると自信は減衰してしまうのです。

 

次回はARCSモデルの最後S(満足感)についてです。