研修を受ける学習者を分析し、現状を理解しましょう

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今まで学習成果の5分類についてみてきました。

話をADDIEモデルのAnalyze(分析)に戻すと、ニーズを分析することが

Analyze(分析)の目標でした。ニーズのうち、研修のゴール、研修範囲に関してはこれまで説明してきました。ではニーズの最後の要因、現状について分析していきましょう。

現状を分析するということは、受講者つまり学習者を分析することになります。ひとえに学習者を分析するといっても、要因や特性が数多くあるため、いくつかに絞って分析する必要があります。そこで、アメリカ心理学会の支援を受けたワーキンググループ(APA Work Group)が学習に関する要因を14の心理特性と4つの要素に分類しました。それが上記の表になります。

認知・メタ認知の因子についてですが、これを考えるにはまずスキーマという概念を学ぶ必要があります。

今までの経験、つまり学習の成果はそれぞれひとまとまりの事柄として記憶に保存されていると考えられています。これらはさらに記憶のネットワークとして組織化されていると考えられており、このネットワークのことをスキーマと呼んでいます。組織化するには個々の事柄を結びつけるための概念が必要となりますが、この概念に結び付くための特徴をスロットと呼びます。

このスロットに当てはまる個別の出来事や事物が結び付いていきスキーマを構成していくわけですが、スロットに結び付く物事は個人の経験に依存しており、結び付いているものが違うということは各人のスキーマもそれぞれ異なっているということになります。

既知のスキーマを利用し参照しながら新しい事柄を学ぶというのが学習の特徴となりますので、各個人個人がどのようなスキーマを持っており、そのスキーマがどのように異なっているかということは考慮しなければならない要因です。

次に動機づけの因子についてです。動機づけとは学習者を学習に駆り立てる力のことですので、この動機づけによって何をどれぐらい学ぶのかが決まります。動機づけには外発的なものと内発的なものがあり、内発的なものは好奇心と達成動機があります。この因子についてはARCSモデルの項で詳しく扱っています。

発達と社会性の因子ですが、子どもの発達段階に応じた因子になります。ピアジュや ヴィゴツキーなどが研究してきた分野になります。企業内研修は社会人つまりは大人を対象としているので、今回は置いておきます。

最後に個人の差異に関する因子です。これは能力や性格に違いがあり、それぞれに応じた対応が必要であるということを指しています。能力とは言語理解力や記憶力といったものから視力のような肉体的なものまで様々ありますし、性格は不安を感じやすいか否か、自己効力感の強さ等が研究されています。

また評価と測定も個人の差異の因子に含まれているため、目標を明確にし、到達度を随時測定しながら評価するということは大切なことです。

学習者自身で自己評価することは動機づけや学習に影響を与えます。自己評価をするときには自分で目標を立て、経過を記録し続けていると肯定的な影響がありますが、目標に対して興味がなかったり達成できるか不安を感じているときに自己評価をさせると上手くいかないケースが多いといわれています。