目標を分解し、再構築しましょう

f:id:togashimotohiro:20210505184057j:plain

目標が明確になったら、その目標を分解していきます。そしてその分解した目標を再構築することで研修を設計していきます。

目標を分解していくには、情報処理分析と呼ばれてるような手続き型の課題分析と学習課題分析の二つを行っていきます。

手続き型の課題分析は、目標を達成するために行わなければならないことをステップに分解していくことのことです。ここでは観察が可能な行動だけでなく、頭の中で行われることもステップとして分解していく必要があります。

例えば「パソコンを立ち上げログインする」という目標に対して、観察できるのはパソコンの電源のボタンを押し、マウスでカーソルを合わせてIDとパスワードを打ち込むところだけですが、この目標を達成するためにはパソコンのボタン配置やボタンについている記号などを思い出す必要がありますし、マウスのカーソルの動かし方やカーソルと合わせる位置を判別したり、IDとパスワードを打ち込むためにはキーボードを使えなければなりません。キーボードをブラインドタッチで打ち込めるよう練習したり、目視しながら手がスムーズに打ち込めるよう技能を高める必要があるかもしれません。

このように観察は出来ませんが必要である要素も抜き出し、目標を分解していきます。これらも学習成果の5分類で分類できるようにしておくとわかりやすいですし、研修の設計に便利です。

この手続き型の課題分析、情報分析が完了し目標を分解した後は学習課題分析に入ります。これは分解した目標を分類していくことになります。

研修終了時に達成されている目標(達成目標)と、研修中に達成されている目標(下位目標)に分類します。下位目標は達成目標の必須の前提条件であるか、目標の達成を促進するための補助的な前提条件のどちらかになります。

先ほどのパソコンの例でいえば、「パスワードを入れてログインできる」というのが達成目標になり、「キーボードで文字を打てる」というのはパスワード打ち込みの必須の前提条件になります。「ブラインドタッチができる」ということはパスワードを打ちやすくするための補助的前提条件になります。

情報分析と学習課題分析が終わった段階でこの分析の結果をまとめていきましょう。図式として表わすのがわかりやすく、教授カリキュラムマップという図で表現することがお勧めです。上記の表がその1例です。

書き込む際のルールとしては線同士でつないでいるものが必須前提条件、矢印で結ぶものが補助前提条件になります。また、学習成果が異なる場合は線の間に学習成果の分類を入れておきます。この時に目標と違う図形にした方が見やすくなります。ここでは三角形にしています。上にある目標を下に向かって分解していき、下部の下位目標を達成していくことで上位の課題が達成できるように作っていきます。

研修が単発であったり、研修の目標が難しくない場合は一つの図でいいのですが、長期にわたる継続研修であったり、研修内容が複雑で目標がいくつもある場合には書き込む量が多くなりすぎるため、分けたほうが良いでしょう。その場合には研修の最終ゴールを単元で構成した教授カリキュラムマップと、その単元ごとにさらに分解して設計するマップとに分けていくとよいといわれています。

上記の図の左側が研修の最終目標を単元ごとに分解した図、その単元をさらに分析し教授カリキュラムマップにしたものが右側の図になります。この右側のカリキュラムマップからさらに1回に学べるであろう量に分けていくことで、1コマ当たりの研修を設計していきます。

研修を組むときにはマップの下側にある目標から始めたほうが良いです。なぜなら、下にある目標が上にある目標の前提条件になっているからです。さらに1コマごとに分ける場合は繋がりを意識してグループ化したものに分けましょう。学習成果ごとであったり、下にあるものから順番にといった具合にまとめると、研修内容がバラバラになってしまい、理解しにくくなってしまいます。

ですので、マップの下部にある目標を含んだ一連のグループごとに分けていき、それを1コマとして研修を設定していくとよいのです。そして繋がりでまとまったものを学習していくことで、新しいスキーマを獲得することができます。

スキーマは一般的にはいくつかの学習成果を統合して形成されていくと考えられていますので、異なる学習成果であっても1回の研修で一緒に学んだ方が統合されやすく、スキーマを形成しやすくなります。

獲得したスキーマを活用することは新しく学習することの手助けになりますし、学んだことを記憶し保存するためのメタ認知機能も供給してくれます。