受講者の学んだことの評価について考えましょう

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Design(設計)の最後に評価について考えていきます。

そもそもなぜ評価することが必要なのでしょうか。評価することには5つの目的があります。

1.受講者の配置。

         受講者が何を知っていて何を学ばなければならないかということを

         明確にするために行います。特に長期間にわたる研修の場合、

         最初からすべての研修を受けてもらうべきなのか、途中からで

         問題ないのかなど、必要な研修だけを受けてもらえればいいように

         受講者の達成度を評価します。

2.困難度の診断。

         前提条件での習得具合を測定するために行います。

         診断テストの形をとることが多く、何が前提スキルとして必要かと

         いうことを受講者に伝えることもできますし、テストを解いていく

         ことで補習としても使えます。

3.進捗度チェック。

         学習目標を習得しているかを裏付けるために行います。

         教授カリキュラムマップで見てきたとおり、学習目標は階層に

         なっており、下部の目標が習得されていないと上部の目標が

         達成できない構造となっているため、それぞれの学習目標が

         達成されていないと次のステップに進めません。

         進捗テストの結果を見ながら研修を進めていくとよいですし、

         随時テストを行いながらフィードバックすることで受講者のやる気

         を高めることもできます。

4.報告。    

         企業で行う研修である以上、報告は必須です。

         何をどの程度学び、どのように学習したかを端的に表すには

         テストで示すのが簡便です。

5.教え方の評価。

         パフォーマンス・テストを行うことで、その合計得点が研修の

         成功度合いとリンクしますし、各項目ごとに分析することで

         部分部分の修正点も見つかります。

         また、研修の総括評価を行うときにも受講者の評価を通じて行う

         ことになります。

評価の仕方ですが、大きく分けて2種類あります。基準準拠評価と集団準拠評価です。

基準準拠評価というのは、合格基準を設定してその基準を達成した人は全員合格にするというやり方です。

集団準拠評価は、偏差値や順位に代表されるような他人と比較して受講者個人がどの位置にいるのかを評価するやり方です。

集団準拠評価では人を選抜するのには向いているのですが、合格基準がずれるため目標を何人が達成したかということはわかりません。

企業での研修は目的を達成するために行われます。受講者の順位付けではなく何人目標をクリアしたかのほうが重要ですので、基準準拠評価をもとに評価していくことが推奨されます。

目標準拠テストはこの基準準拠評価の考えに基づいて設計します。つまり学習目標として掲げられている行動を観察し評価することで、何人の受講者が目標に到達したのか、研修の目標は達成されたのか、あるいは研修は適切であったかどうかといったことが評価できるわけです。

また目標と評価が同一になりますので、測定方法の妥当性も確保できます。

特にDesignの最初に説明したゴールを具体的に変換した目標であれば、何をどういう状況でどのようにどうするかということが明確になっていますので、改めてテストを考える必要がありません。

ただし、目標が不完全であったり、条件が用意できない場合があります。例えば目標が「結果を推測する」といったようにあいまいであったり、条件が「顧客の前で」プレゼンするなどの場合です。この時に注意しなければならないのは目標と評価が整合するように気を付けなければなりません。

例えば、「推測」を観察するために「可能性を列挙する」であれば整合性は保たれますが、「悪い結果を回避する」は推測出来ているかどうかだけではない評価になりますし、「顧客」がいないからといって「社内の経営陣」にプレゼンするとなれば、一般的には条件が異なってしまうため、目標の評価としては不適当です。

また評価をする際には完全習得を目指すべきだといわれています。

完全習得とは、適切な条件が与えられれば、ほとんどの受講者が合格の基準をクリアできるという考え方です。そのためもし成績が悪ければ、学習が出来ない人という受講者側の要因ではなく、合格を妨げている状況を改善しなければならないという講師側の要因として考えていきます。

完全習得には合格の基準と達成者の数という2つの基準があります。

例えばテストは100点満点で作られますが、実際には80点以上で合格になります。受講者にとってはこの時の合格基準が何点かというのが完全習得の基準になりますし、研修にとっては合格基準に達したのが全体の何割以上かというのが完全習得の基準となるわけです。そしてこの完全習得の基準が、研修が保証しなければならない結果となります。

完全習得を達成するためには、完全習得になるように阻害要因を排除していきます。

阻害要因となるのは、主に3つあるといわれています。

1.学習時間が短すぎる

2.教え方があっていない

3.前提知識やスキルが十分でない

 この3つの要因について考えることで研修を改善し、テストを行っていくことで受講者だけでなく研修自体のフィードバックを受け、次回の研修に活かしていくサイクルを回すことが、インストラクショナルデザインということになります。

評価について考えなければならないことの最後は、テストの信頼性です。

そのテスト項目が目標を測定できていると信頼できるかどうかということを考えなければなりません。信頼性は2つの要因から成り立っています。

一つ目は一貫性です。

ある目標に対するテストを何種類もする場合は同じ種類でなければなりません。

例えば「見積もりを作ることができる」という目標に対しては、条件を変えていくつかの見積書を入力できるかを確かめることが必要であって、顧客から価格交渉を受けてそれを価格に反映させて見積を作り直すなどのような、条件や種類を変えてテストすることは一貫性に欠け、「見積もりを作ることができる」という目標の評価としては信頼性が低くなってしまいます。

もう一つは時間的な信頼度です。

時間が経ったとしても、意図した条件以外の要因でも、結果が変わらないということを示さなければなりません。

1回目のテストをした後に数日程度時間をおいて2回目のテストをし、学習内容が記憶されているか、前回の結果が他の要因(例えば体調の良し悪しやその日の気温や天気等)の影響がなかったかどうかを確認することで、結果に対する信頼性を高めることができるのです。