学習成果の5分類 態度

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学習成果の5分類の最後は態度です。

態度は、ここでは学習者の個人的行為の選択に直接的な影響を与えるもののことを指しています。正確に定義するのであれば、「ある対象・人・事象に対する個人的行為の選択に影響を及ぼす内的状態」のことを指します。

従って態度を評価するときには様々な状況で同じような行動を選択するかどうかを観察しなければなりません。これには時間もかかりますし、手間やコストがかかります。観察されているという状況が影響を与えないよう目立たないように観察しなければなりませんので、なおさらです。従って、態度の測定にはアンケート用紙などでの自己申告に基づくことが多くなっています。

態度の学習は言葉だけでは不可能であるということがわかっています。例えば「他人には親切にしましょう」「運転に注意しましょう」とただ言うだけではほぼ効果がないということです。態度を変えさせるためには直接的方法と間接的方法の二つの方法に効果があることがわかっています。

直接的方法はある行動をとったら罰を与えるあるいは報酬を与えることで、行動の選択を変化させることです。これは別に物や金銭を与える、取り上げるということでなくてもよいです。例えば不用意に壁に触ると大きな音がすれば壁にもたれかけたりはなくなりますし、椅子の背もたれに体を預けないことをほめれば姿勢よく座るようになるでしょう。このようにしてほしくないことには望ましくない結果を、してほしいことには望ましい結果が与えることは、行動の選択に大きな影響を与えます。

もう一つの方法は間接的方法で、人間モデリングと呼ばれる手法です。モデルとなる人間を観察し、望ましい行動とその結果としての喜びの経験を感じ取ることで態度を学習します。例えば、親の行動が子供の手本となったり、スポーツ選手が努力して記録を樹立して喜んでいるところを見て、真似しようとしたりすることです。この時に注意しなければいけないことは、してほしい行動を見せることとそれが良い結果に繋がり、喜びを得たというところまでしっかり見てもらう必要があるということです。

例えば、練習をしっかりとやってもらいたいと思うのであれば、野球選手がヒットを打って喜んでいるシーンだけではなく、普段の練習と試合でヒットを打ちチームメイトに祝福されているシーン両方を見せる必要があるということです。その二つを見て初めて、同じ練習を行うことでヒットを打って喜べるということが学べるのです。

実在の人物では難しい場合はロールプレイで想像してもらうということもいいですし、複数人で討議する中でも人間モデリングは生まれるといわれています。

態度の学習に関しては、上記の理論をもとに学習法のガイドラインが作成されています。

1.学習者に取りうる選択肢に関する情報を与えること

 (選択の可能性を知らないため、望ましい態度をとらないこともあるため)

2.望ましい行動のプラス面とマイナス面を伝えること

 (行動を変えるにはその行動のもたらすメリットを伝えないとその行動を選択して

  もらえないし、費用対効果は特にすぐ結果が出ない場合には重要になる)

3.望ましい行動に関連性のあるモデルを示すこと(人間モデリングを促進するため)

4.望ましい行動を支援する環境であることを確認すること

 (環境が整わないとやりたくてもできない)

5.望ましい行動をより大きな価値の枠組みにあてはめること

 (態度には価値観が反映されるため、社会的価値とか職業倫理といったより大きな

  価値観に当てはまると態度を学習しやすくなる)

6.望ましい行動を可能にする技能を特定し、教えること

  (やり方を知らないとその行動を実行できない)

7.望ましい行動が現れたとき、それを認識しほめること

  (直接的方法を促進するため)

8.望ましい行動を不用意に罰しない

  (何が強化になるかは注意しないと罰になるかもしれません。

   仕事が好きな人の仕事を減らせば罰になるかもしれないですし、

   仕事が速い人の仕事量を増やすことは報酬にならないかもしれないでしょう)

9.さらにやりたいと望み、より生産的になる方法で、強化を提供するべきである。  

  (直接的方法を無理なく継続できるようにしましょう)

10.望ましい行動に関する目標を学習者自身に設定させること

  (行動を獲得するためには気づき、需要、価値づけ等の段階があり、

   行動は変容させにくく、非常にゆっくりと変容するため、自身で目標の設定、

   記録、再評価をすることは望ましい行動の採用に大きな自信となります)

11.シミュレーション、ロールプレイング、協調プロセスなどの双方向的な教え方を

   行い、その中で望ましい行動からの利点が明らかになる経験を与えること

  (人間モデリングが補完されます)

12.不用意に変容させたい行動と関連のない行動を組み合わせないこと

   (「行動の強迫観念」を形成してしまうリスクがあるため、

     関連性が最も高い行動を最優先すべきです)