学習意欲は低すぎず高すぎず丁度良く
学習意欲についてARCSモデルをもとに説明してきましたが、最後に学習意欲はどのぐらい高めるべきなのかを説明していきたいと思います。
学習意欲は高ければ高いほど効果があると思われがちですが、ある一定以上に高めようとすることは、逆効果になってしまいます。
既に学習意欲が十分ある受講者に対して、さらに動機付けの強化を行おうとすると逆に学習の進捗を妨げることになってしまい、受講者をイライラさせてしまう結果になるからです。
また、学習意欲が低すぎる場合は興味が持てず退屈し、学習効果は低くなりますが、あまりにも学習意欲が高すぎると今度は不安になってしまい、学習成果が低くなってしまうのです。この逆U字カーブの関係性は、発見者の名前を冠し、ヤーキス・ドッドソンの法則と呼ばれています。
学習意欲が低いと効果が出ないというのはよくご経験されていることだと思いますが、学習意欲が高すぎてもよくないということはあまりピンと来ないかもしれません。前回までのARCSモデルの各項目、「注意」「関連性」「自信」「満足感」のそれぞれの項目で説明していきたいと思います。
「注意」この項目が低いと退屈し、関心を持てなくなります。一方でこの項目が高すぎると、刺激が多すぎて一つの刺激に注意し続けられなくなります。
例えば、読書がお好きな方であれば、本屋や図書館に行って様々な本に目移りしてしまい、一つの本に集中できなかったご経験をお持ちだと思いますが、研修でも同様に注意を惹く項目がいっぱいありすぎると、目移りしてしまい、一つに注意し続けられなくなってしまいます。
「関連性」この項目が低いと無関心になってしまいます。逆にこの関連性が高すぎると危機感が高まり、ひどく不安になる可能性が高まります。
典型的な例は受験です。その後の人生が大きく左右されてしまいますので、受験勉強をしながら不安を感じたことがあると思いますが、研修の結果が評価に直結するような場合は関連性が高すぎ、不安になりやすいです。
「自信」この項目が低ければ無力感に苛まれます。逆に自信過剰の場合、自分の知識で十分と思い、学ぼうとする意欲が失われます。
例えば、営業経験3年目の社員を対象に営業基礎研修を実施する場合は自信過剰になりやすいです。既に現場で経験しており、知っていると思うからです。この時注意しなければならないのは、本当に知っていたら適切な自信であり、知らないことがあるのに、知っていると誤認していた場合が自信過剰となります。あくまでも自分の知識と研修内容とのギャップを認識できるかどうかが自信過剰か否かの境目となります。
「満足感」この項目が低いと「この研修の結果がどれだけ良くても好きになれない」という気持ちになりやすいです。逆に高すぎると期待しすぎて、その研修がすべての問題を解決してくれたり、スキルを完璧に身につけさせてくれると勘違いし、失望してしまうことになります。
例えば、語学研修を実施する際に、海外と直接接触せず業務で外国語を使わない部署の方にとっては学んでも得るものが少なく、満足感に乏しい研修でしょう。
一方で海外と直接やり取りをする部署の方でも、この研修を受講するだけで海外の取引先と何の問題もなくやり取りできるようになると期待していた場合、この語学研修が基礎的な内容であればいくら良い成績を収めても、期待していたレベルには到達しないので、失望してしまい、満足感が低くなってしまいます。
このように、学習意欲は低すぎるのは勿論ですが、高すぎても良好な結果が得にくくなります。学習意欲を持ってもらうことは大切ですが、過剰にアプローチしないよう状況を見ながら調整していく必要があります。