ADDIEモデルのD(開発)

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ADDIEモデルのもう一つのD、Develop(開発)についてです。開発とは研修で利用する教材の準備を指しています。Design(設計)で作った仕様書をもとに、予算や学習環境、学習内容などを考えながら開発する必要があります。

開発というと一から作ることを想像しがちですが、既存の教材でも流用できるものがあれば使った方が予算や時間の面から有益です。開発の状況を4つに分類して説明します。

1.既存のカリキュラム内での作業

新入社員研修などのように定期的に行われるような研修では、すでにカリキュラムも教材等も決まっており、それをもとに作業を進めるという場合があります。この場合には講師のスタイルに合わせてアレンジをする程度でオリジナル教材を開発することは少ないといえます。

2.既存教材の「目的の再設定」

管理職研修などのような研修では一般的なセミナーの内容を変更・補足して、その会社での研修にふさわしくなるように修正していくことがあります。特に中小企業にとっては独自の教材を一から作ることはコストがかかりすぎ、費用対効果が見合わないことから、既存の販売されている資料を改良して使うことがお勧めです。

この再設定を行うためには研修のニーズと目的を分析、定義してどの部分をどのように変更すべきか教材を研究する必要があります。

また、昨今ではWEBでのオンライン研修も増えてきました。リアルで行ってきた研修をオンラインに変更する際には条件が変わるため、Design(設計)をやり直して適切な効果が出るよう手を加えていく必要があります。

3.新しい研修への既存教材の要素の組み込み

新しく研修をしなければならない場合、既存の教材が使えるかどうか確認することで、時間や金銭などのコストを削減することができます。この場合、前の2つのように教材をすべて使うわけにはいかないかもしれませんが、一部を使ったり組み合わせて研修全体をカバーできる、あるいは新しい研修の一部分を補うことができるかということを確認するとよいでしょう

4.新規研修の構築

一からすべてを作る場合です。既存教材の制約がない分オリジナルの教材を作ることができますが、費用対効果を意識することが大切です。

 

また、Develop(開発)にはいくつかの原則があります。

1.明確な目標設定

目標が明確であればあるほど、教材の内容をより明確にできますので、市販教材を探しやすくなりますし、どの部分が欠けているかを確認することができます。一から開発することはコストがかかることであるため、既存の市販教材を流用した方が安上がりになるケースが多いです。

2.革新的な目標設定

目標が革新的であればあるほど、既存の教材でカバーできる可能性が低くなります。研修で革新的な目標を立てるのは大事なことですが、時間やお金などのコストとのバランスをとる必要があります。

3.チームによるアプローチ

一般的には研修の計画をする人が開発チームでもリーダーとなることが最善です。そのリーダーを補うようにメディアの専門家や専門分野のある人がメンバーにいるとよりよいといわれます。

4.IDvsメディア制作

制作する際に、WEBや映像などのメディア制作における優先事項とインストラクショナルデザインの基準が対立することがありますが、研修とは教えることが優先されるため、インストラクショナルデザインを優先すべきです。

5.作るのか、買うのか

教材の開発に取り掛かるときには「作るのか」「買うのか」を検討して、安上がりな方を選択する必要があります。作った方がより研修の目標に沿った教材を作れますが、購入したほうが安価に上がるケースが多いです。このバランスをとっていく必要があります。研修はあくまでも企業での活動のため、費用対効果を高くする必要があります。従って、目標を達成できる範囲で可能な限り安く上がる方法を常に模索する必要があるのです。

開発についての概論を見てきました。これらのことを意識して開発をしていくと、より効果的な教材を開発できると思います。

このほかに、各学習成果の学習条件について確認していきたいと思います。

設計の段階でも必要ですが、教授分析によって分類された5つの学習成果にはそれぞれ特有の学び方がありますので、それらを反映して教材を作るとより良いものを作ることができます。