Develop(開発) 知的技能・弁別
Analyzeで分析した5つの学習成果別に、Design(設計)、Develop(開発)の2つのDで考慮すべき要素について考えていきたいと思います。
最初は知的技能についてですが、知的技能もさらに階層別に分けて考えていきましょう。
というわけで知的技能の最下層「弁別」についてです。
弁別とは「物理的、感覚的に刺激の違いを検知する能力」のことです。
たとえば、円と四角形を見分けるとか、雨と雪が違うことがわかるといったような能力のことです。
学習成果を得るためには、受講者自身の中にある要素と研修によって教えていかなければならない要素があります。
弁別の学習者自身の中にある要素、内的条件は違いを感覚的に理解できていなければなりません。
例えば、モスキート音は加齢とともに聞こえなくなってくるといわれていますが、モスキート音を知覚できなければそもそも普通の音とモスキート音を弁別することができません。音に限らず文字や図形、食べ物の味でもいいのですが、違いが理解できないとそもそも弁別できないのです。
研修によって教えていく要素、外的条件としては違いを意識させ、その違いを感じ取る練習をしていく必要があります。
そのためにはまず何を弁別していくかを伝えなければなりません。
例えばエスキモーは雪を数種類に区別しており、今回はその雪の区別について学ぶことにするとします。冒頭に講師からエスキモーの雪の区別について学ぶと伝えたほうが、何をするかが明確になります。
そして具体例を提示して、違いを感じ取ってもらいます。
今回の例でいうと、雪の現物かあるいは写真などを何種類か用意し、それらのどれとどれが一緒でどれが違うかを考えてもらいます。
そのあとに弁別するための違いを伝えて、その違いを意識してもらいます。
例えば雪の密度であったり、硬さであったりに注目してもらいます。
最後にもう一度練習をしてもらい、弁別できるようになったかを確認していきます。この時にフィードバックを与えながら練習することで確実に弁別の能力を身につけさせていくことができます。
つまり違いを想起させ、具体例をいくつも提示しながら違いを説明し、フィードバックしながら練習することで効果的に学んでいくことができるのです。
弁別は違いを知覚できるか否かになるので、前提条件としての学習成果は特にありませんが、言語情報、認知的方略や態度などでより効果的に学べることもあります。
また、弁別が身についたかどうかを確かめるためには、具体例をいくつも出してそれらが違うか同じかを正答できるかどうかを評価してくことになります。
この時に何が違うから違うと判断したのかという理由や、同じものとして括る属性の名前を答えられる必要はありません。それらを答えられるのは弁別の上位階層、概念が理解できているからということになるためです。
次回は知的技能で弁別の上位階層概念について考えていきます。