Evaluation(評価)形成的評価と総括的評価

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研修の評価には形成的評価と総括的評価という目的別に分類したものと、評価の対象別に分類した5タイプの分類の2種類があります。

まずは形成的評価と総括的評価という評価概念について説明していきます。

形成的評価と総括的評価はその評価をどのような目的で使うかということで分類されています。形成的評価はインストラクショナルデザインの各部分を評価するために行われ、総括的評価は研修全体を評価するために行われる評価法を指しています。

そのため形成的評価では研修の各部分がうまくいったかどうかだけでなく、それがなぜなのかまでを確認する必要があります。例えば、資料を使用することで理解が高まったという結果だけでなく、その資料がなぜ効果的であったのかまで評価する必要があるのです。

総括的評価はその研修がうまくいったかどうかを判断します。受講者が合格基準に達したかどうか、研修によって求められる水準まで受講者を高めることができたか、あるいは目的としていた職務上の課題を解決できたかどうかを評価していきます。

この形成的評価と総括的評価を行うための代表的な評価法としてカークパトリックの4段階評価があります。Analyze(分析)の時にも紹介いたしましたが、改めてその評価方法について説明したいと思います。

1.受講者の反応

研修後に行われるアンケートで評価していきます。

どのぐらい研修が楽しかったか、うまく教えられたかについて4問程度の簡易的な調査から講師、教材、環境に関する有効性や効率性といった要素を評価するための詳細なアンケートまで様々なものがあります。

2.受講者の学習

研修によってどのくらい学習できたかを評価します。つまり研修目標に対する受講者の達成度を評価していきます。

3.受講者の行動

受講者が研修で学んだことをどれだけ職場での仕事に転移させることができているかを評価します。

仕事のパフォーマンスの向上度合いを評価するわけですが、当然のことながら仕事のパフォーマンスは研修以外の様々な要素が絡むため、一度それらの要因も含めて評価し、その後分解していき研修の影響を特定していくという方法をとることが多いです。

4.組織の結果

研修によって組織のパフォーマンスが向上したかどうかを評価していきます。研修がもともと目的としていた組織の問題に対して影響しているかどうかを評価することが必要となります。研修を行うと往々にして意図したところ以外のパフォーマンスも向上することが多く、それらも重要ではありますが、一義的には目的に対しての達成率を評価することが求められますし、そこを評価する必要があります。

この4つの評価の上に「ROI(投資回収率)」を置くこともあります。つまり研修にかかった費用と向上したパフォーマンスの金銭的価値とを比較して投資回収率を算出するというものです。

このカークパトリックの4段階評価は形成的評価にも総括的評価にも使用します。

例えば2.「学習」の結果が悪ければ、研修方法を見直すという形成的評価に使用することもありますし、4.「結果」が悪ければ研修そのものを中止する、あるいは1.「反応」で研修の参加率があまりにも低ければ研修そのものを見直しするといったように総括的評価にも使用します。

一般的には形成的評価には1.「反応」、2.「学習」をよく用い、総括的評価にはどの項目も用いられます。とはいえ、3.「行動」、4.「結果」を形成的評価には絶対使わないというわけではありません。例えば研修で学んだ内容を職場で実施してもらえなければ、その理由を探り改善するという形成的評価に使用することも当然あります。

また、一つの評価から形成的評価と総括的評価を両方行うことも当然ながらあります。例えば、1.「反応」でアンケートで講師が不評であればディスカッション形式に切り替える等という形成評価をするとともに、研修以外の方法でパフォーマンス変化を求めるなどの総括的評価を行うこともできるのです。