ADDIEモデルのA(分析)
研修を最初から計画するときにに最初に考えなければならないことは、 「問題に対して研修が解決方法になるのか?」ということです。
例えば業務の安全性を高めるために「ヒヤリハット」を報告してもらう仕組みを作ったのですが、なかなか報告が上がらなかったとします。
報告のシステムが複雑であったり、改善策の記入と誰が報告したかがわかり、報告者を追及できるような仕組みにした場合、報告が上がらないのは担当者個人というよりも仕組みの問題です。そのため研修をするのではなく、システムを簡略化する、報告者を匿名化し改善策は本部で検討するといったように仕組みの変化が問題の改善につながるでしょう。
一方で「ヒヤリハット」の報告の仕方がわからない、そんな仕組みがあるとは知らない等の場合は研修を実施して報告方法を学んでもらうことが解決策になります。
研修を計画するときはどうしても研修ですべてを解決しようと考えがちになってしまいますが、一歩下がって、研修以外で解決できる方法がないかを再確認してみましょう。そのうえで研修でしか解決できない、あるいは研修で解決する方が効果的である時に初めて研修を計画すべきなのです。
そしてもう一つ考えなければならないのは、「この研修はどんな問題を解決するのか?」ということです。
先ほどの例でいえば、報告書式や用語、報告フロー等を研修で伝えるのは、なぜ必要なのでしょうか。
書式が決まっていた方が書きやすいし、必要なことが網羅されており集計しやすいであったり、用語が統一されていると正確なコミュニケーションが取れる、フローが定まっていることでスムーズに報告できる等の必要性があります。
このように解決すべき問題に焦点を充てて研修を設計すると、無駄が省けますし、より目的に適した研修になります。他の報告との書式の比較や、世間一般の語句と専門用語の違い、他の報告フローとの合致箇所の説明などは(完全に不必要とは言いませんが)研修に盛り込まなくても目標を達成できますし、省くことでより目的を明確にした研修になります。
つまり、研修の最終到達点を意識することがより効果的な研修につながっていきます。
一般的にニーズアセスメントでは望ましい状態と現状との不一致を「ニーズ」と呼びます。
ADDIEモデルの分析の目的も、実際の状態と望ましい状態を正確に描写することと、その望ましい状態の実現に影響を与えるであろう要素の調査になります。
これらの要素をどのような文脈の中で構成していくのかや、利用可能なリソースであったり、研修者の既習スキルといったことも分析していくのです。
では、具体的に何を分析していくべきかを次回確認していきたいと思います。