学習成果の5分類 知的技能
学習成果の5分類の説明の2つめは「知的技能」です。
「知的技能」は何かができる能力のことです。つまり、ルールを活用できる能力のことを指しています。例えば作文や四則計算のようにルールに沿って問題を解決していくことのことを言っており、別名手続き的知識とも呼ばれています。
前回の言語情報と知的技能は両方とも知識を学習するという点では同じですが、「知っている」と「出来るようになる」という違いがあります。この違いを意識することは研修の目標を明確にし、計画していくうえでとても大切なこととなります。
知的技能はさらに4つの階層に分類することができます。分類された階層は、下の階層のスキルが上の階層のスキルが発揮されるための前提条件となるように分類されています。
弁別とは違いを見分ける能力のことを指します。例えば英語学習でいえば過去形と現在形、名詞と動詞を見分けることができるといった能力のことを指しています。
概念とは弁別したものを共通の特徴で1くくりに出来る能力のことを指します。先ほどの英語学習でいえば、LearnedとLearntは文字は違いますが、両方ともLearnの過去形であるといったように違うものを同じ種類に分類できることを指しています。
ルールとは概念間の関係のことを指しています。例えば「The girl Learned English.」という英文は文法のルールに従って語句の並ぶ順番が決まっていますし、定冠詞のルールに従って定冠詞が使われています。他にも時制のルールやピリオド等のルールも活用されて文は完成します。このように具体的な事例にルールを適用できるようになって初めてルールを習得できたといえますし、ルールを習得したことによって同じような構造の文を作れるようになるのです。
ここで注意しなければならないのは、ルールの定義が言えたとしてもルールが適応できるとは限らないということです。つまり、ルールの学習とは定義を覚えることではなく、それを実際に適用できるかどうかを指しているということです。ここが、言語学習と知的技能との違いになるのです。つまり、知識を「覚える」のではなく、「使える」ことが知的技能の学習なのです。
問題解決とはいくつかのルールを組み合わせて複雑なルールを作り出し使用することを指しています。例えば英語長文の翻訳をしなければならないとき、最初のうちは逐語訳をしてその後意味が通るように語順を並び替えていきますが、段々英語の文法や日本語の文法などを組み合わせていきながら、一文ずつ一気に翻訳していき、最終的には文章の大意を掴み、それに即して日本語に訳していくといったように問題を解決していくでしょう。この時に既知のルールを思い出し、組み合わせて新しいルールを創り出しながら、それを適用していくということが頭の中で起こっているのです。
研修を行うときに問題解決能力の育成が主な目的になることがほとんどです。
この問題解決能力を育成するためには、実際に問題を解決していくことが必要だといわれています。つまり、今までに学んだルールを適応するだけでは解決できないが、今迄に学んだルールを組み合わせれば解決できるような課題を解いていくことで問題解決能力が育成されるのです。その際に随時ヒントを与えたり、微修正を行う等のフィードバックを与えることで学習は促進されます。課題を達成した後で振り返りったり、成し遂げたことを言語化してもらうことは新しく生成されたルールの保持を高めますし、類似の問題を解いてもらうことでルールの転用がスムーズになります。
この問題解決能力の育成にはグループワークが有効だと考えられています。なぜなら、今説明した条件のほとんどが入っているからです。即ち、お互いにフィードバックを与え合いますし、学んだことや考えたことを振り返り言語化して他のメンバーに伝えなければなりません。
ただし、集団ではなく個人が本当に問題解決能力を発達させたかをチェックするためには、個別に類似問題を解かせてみなければならないという点に注意が必要になります。